Jリーグの判定を語るうえで、欠かせないのがVARです。
VARは「Video Assistant Referee」の略で、日本語ではビデオアシスタントレフェリーと呼ばれます。主審の判定を映像で確認し、重大な誤審を防ぐための補助システムです。
ただし、VARはすべてのファウルや判定を見直すための仕組みではありません。
VARが介入できる4つの基本的な場面Jリーグ公式のVAR解説では、基本的な対象事象として次の4つが示されています。
① 得点か、得点ではないか
オフサイドや攻撃側の反則、ボールがゴールラインを越えたかなどを確認する。
② PKか、PKではないか
ペナルティーエリア内のファウルやハンドなどを確認する。
③ 退場か、退場ではないか
決定的な得点機会の阻止や著しく不正なプレーなどを確認する。
④ 警告・退場の人間違い
本来処分されるべき選手とは別の選手にカードを出していないか確認する。
2026/27年度のJFA競技規則では、退場の対象に明らかに間違った2枚目の警告も含まれています。また、競技会が採用する場合に限り、明らかに間違って与えられたコーナーキックもレビュー対象にできます。
つまり、VARの対象は単純な4項目という説明だけでは捉えきれず、適用する競技規則の年度と大会ごとの運用を確認する必要があります。
VARが介入する「はっきりとした明白な間違い」とは?VARの重要な原則は、主審の判定を何でも修正することではありません。
判定が微妙だった、別の角度から見ると違う印象になった、といった程度では介入の理由になりません。
必要なのは、はっきりとした明白な間違い、または見逃された重大な事象です。
例えば、次のような違いがあります。
- 明らかにオフサイドの位置にいた選手が得点に関与していた。
- ペナルティーエリアの外で起きた反則をPKと判定した。
- 明らかな退場相当の行為を主審が見逃した。
- 反則をしていない選手に退場処分を出した。
一方、身体接触があったかどうかだけでなく、その接触が反則に当たるかどうかは主観的な判断を伴います。映像を見れば必ず判定が変わるわけではありません。
オンフィールドレビュー(OFR)とは?オンフィールドレビュー(OFR)は、主審自身がピッチ脇のモニターで映像を確認する手続きです。
一般的な流れは次のとおりです。
VARが映像をチェック
対象となる事象について複数のカメラ映像を確認する。
主審に情報を伝える
明白な誤りなどの可能性があれば、VARが主審にレビューを提案する。
主審がレビューを判断
主審がTVシグナルを示し、映像を確認する必要があるか判断する。
OFRで映像を確認
主審がレフェリー・レビュー・エリアのモニターで映像を確認する。
主審が最終判定
映像とVARからの情報を踏まえて、最終的な判定を伝える。
ここで重要なのは、OFRを実施したからといって必ず判定が変更されるわけではないことです。
映像を確認した結果、最初の判定が正しいと判断されれば、そのまま判定が維持されます。
VARオンリーレビューとOFRの違いこの2つは混同されやすいポイントです。
| 比較項目 | VARオンリーレビュー | OFR |
|---|---|---|
| 映像確認 | VARからの情報を利用 | 主審自身がモニターを見る |
| 主な対象 | 客観的な事実 | 主観的な判断 |
| 例 | オフサイドの位置、反則の場所 | 接触の強さ、ハンドの判断 |
| 最終決定 | 主審 | 主審 |
例えば、選手がオフサイドポジションにいたかどうかは映像から客観的に判断できます。
一方、選手同士の接触がどれほど強かったか、腕の動きが不自然だったかといった問題は、主審が映像を確認するOFRが適しています。
また、スローモーション映像は位置や接触箇所などの事実を確認する場合に適しており、ファウルの強さなどを判断する際には通常速度の映像を用いることが原則です。
AVARの役割と仕組みAVARは「Assistant Video Assistant Referee」の略です。
VARを補佐し、映像の確認や試合の監視を支える専門審判員です。
VARが映像の確認に集中している場合などには、AVARが主審との連絡を補助することもあります。
映像を確認する場所はVOR(ビデオオペレーションルーム)です。試合の映像を複数の角度から確認し、必要な情報を整理して主審に伝えます。
つまり、VARとAVARは同じ仕事を二重に行うだけではありません。複雑な試合状況に対応し、映像確認を確実に進めるためのチームです。
VARについてよくある3つの誤解誤解①:監督がVARを要求できる
監督や選手がテニスのチャレンジのように正式なレビューを要求する制度ではありません。VARは対象事象を自動的にチェックします。
誤解②:映像があれば必ず正解が分かる
映像は判定を助けるものです。接触の強さや反則の成立など、主観的な判断が必要な場面は残ります。
誤解③:VARが最終判定を決める
最終判定を下すのは常に主審です。VARはあくまで補助役であり、主審に代わって判定を決めることはできません。
【プロフェッショナルレフェリー】Jリーグ審判員の年収と報酬の実態

Jリーグ審判員について、検索されることが多いのが年収です。
「Jリーグの審判員はプロなのか」「J1主審は1試合いくらもらえるのか」「審判だけで生活できるのか」という疑問があります。
ここで区別したいのが、プロフェッショナルレフェリー(PR)と、それ以外のJリーグ担当審判員です。
プロフェッショナルレフェリー(PR)とは?PRは、JFAとプロフェッショナルレフェリー契約を結び、審判活動を中心に専門性を高める制度です。
JFAは、国内外のトップレベルの大会で安定したパフォーマンスを発揮することを目的として、この制度を設けています。
PRは試合を担当するだけでなく、全国で講義や研修を行い、後進の育成にも携わります。
JFA公式のPR紹介ページでは、2026年4月時点で次の人数が掲載されています。
- 主審:20名
- 副審:9名
- 合計:29名
一方、Jリーグは2026年1月の理事会後会見で、2026年の開幕時点ではPRを27名とする計画を説明しています。
この2つは公表時期と掲載対象を区別して見る必要があります。
2026/27シーズンの審判員手当一覧Jリーグの2026/27明治安田J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項には、審判員の1試合当たりの手当が明記されています。
2026/27シーズン・公式試合実施要項
| 担当 | J1 | J2 | J3 |
|---|---|---|---|
| 主審 | 15万円 | 7万円 | 5万円 |
| 副審 | 8万円 | 4万円 | 3万円 |
| 第4審判員 | 3万円 | 1万7,000円 | 1万5,000円 |
| VAR | 6万円 | ― | ― |
| AVAR | 3万円 | ― | ― |
交通費・宿泊費は別途Jリーグの旅費規程に基づいて扱われます。
この金額から分かるのは、J1・J2・J3の担当カテゴリーによって報酬に大きな差があることです。
年間30試合を担当した場合の試算仮に同じカテゴリーで年間30試合を担当した場合、試合手当の合計は次のようになります。
主審の年間手当シミュレーション
J1主審450万円
J2主審210万円
J3主審150万円
1試合当たりの公式手当×年間30試合の単純計算。基本報酬、税金、その他の収入・経費は含まない。
J1主審なら、30試合で450万円という計算になります。
ただし、これは実際の平均年収ではありません。全員が年間30試合を担当するわけではなく、J1・J2・J3の担当数も人によって異なります。
Jリーグ審判員の年収は公開されている?ここは誤解が生じやすいところです。
Jリーグは1試合当たりの手当を公式規程で公表していますが、PRの基本報酬や契約者個人の年間総収入を一律に公開しているわけではありません。
そのため、PRの年収を「1,000万円」「2,000万円」と断定することはできません。
一般の担当審判員についても、試合手当だけを見て年間収入を判断することは難しい状況です。
年収を調べる場合は、次の3つを分けて考える必要があります。
1. 試合手当: 実際に担当した試合ごとに支給される金額。
2. PRの基本報酬: プロ契約に基づく報酬。個別の金額は公表されていない。
3. その他の収入: 本業や審判関連の活動などによる収入。
Jリーグ担当審判員の多くは、別の仕事を持ちながら審判活動を行っています。2026年の理事会後会見でも、約150名の担当審判員のうち大部分が他の仕事と両立している実情が説明されました。
PRの拡大は、審判員がトレーニングや試合後の振り返りに十分な時間を使える環境を整えるための施策でもあります。
【プロの結論】Jリーグ審判員を理解するための重要な判断基準
Jリーグの審判員制度を理解するうえで、押さえておきたい要点は3つあります。
1. 1級資格とJ1担当は同じ意味ではない1級審判員は、JFAが認定する高い技術水準を持った審判員です。
しかし、資格を取得しただけでJ1の担当が保証されるわけではありません。
実際には年間評価や体力テストを経て、JFA審判委員会がカテゴリーを決めます。
資格取得とリーグでの担当実績は、別の段階として考える必要があります。
2. VARがあるから判定への不満がなくなるわけではないVARは判定の正確性を高める仕組みですが、すべての事象を映像で再判定するものではありません。
特にファウルの強さやハンドの成立などは、映像を確認しても判断が分かれることがあります。
試合を観戦する際は、次のような基準で判定を見ると理解しやすくなります。
- 映像で客観的に確認できる事実なのか。
- 主審の裁量が必要な判断なのか。
- VARの対象となる重大な事象なのか。
- OFRを実施した結果、主審がどのような判断を下したのか。
Jリーグの審判員は、試合のパフォーマンスだけでなく、年間を通じた評価や体力維持も求められます。
JFAはJリーグ担当者への研修やトレーニングを実施し、JリーグもPRキャンプや専門スタッフの拡充を進めています。
こうした制度を知ると、審判員の判定を単純に成功・失敗だけで評価するのではなく、試合全体を成立させる専門職として見ることができます。
【Jリーグ審判に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年のJリーグ審判員は全部で何人ですか?
A1:2026年1月27日のJリーグ公式発表では、主審54名、副審94名、VAR・AVAR専任1名の合計149名です。2026年10月31日更新のJリーグデータサイトでも同じ人数が掲載されています。
Q2:Jリーグの主審になるには何級の資格が必要ですか?
A2:基本的にサッカー1級審判員資格が必要です。加えて、年間の試合評価や体力テストなどを経て、JFA審判委員会によるカテゴリー選考を受けます。
Q3:VARが介入したら必ず判定は変わりますか?
A3:いいえ。VARは明白な誤りや見逃された重大な事象を確認するための仕組みです。映像を確認しても最初の判定が正しいと判断されれば、判定は変更されません。最終判断を行うのは主審です。
2026年のJリーグ担当審判員は、主審54名、副審94名、VAR・AVAR専任1名の計149名です。
Jリーグの主審・副審になるには1級審判員資格が基本となり、その後も年間評価や体力テストを通じてJ1・J2・J3の担当カテゴリーが決定されます。
また、PR制度の拡大や若手審判員の早期育成、VAR・AVARの専門化など、審判領域の環境整備も進んでいます。
年収については、2026/27シーズンの公式試合手当が明らかになっている一方、PRの基本報酬や個人別の年間総収入は公表されていません。1試合当たりの手当と実際の年収を混同しないことが大切です。
サッカーの試合は選手だけでは成立しません。主審、副審、第4審判員、VAR、AVARがそれぞれの役割を果たし、試合の公平性と競技の質を支えています。
【今後注目したいポイント】 2026年以降は、PRの拡大、若手の育成、体力面のサポート、映像判定の精度向上が焦点になります。審判員の名前や判定だけでなく、その選考制度や役割にも目を向けることで、Jリーグ観戦の楽しみ方はさらに広がります。