強姦殺人事件では、性的犯罪の成立だけでなく、被害者の死亡に至った経緯や加害者の殺意を明らかにする必要があります。
個別事件によって異なりますが、刑事手続はおおむね次のように進みます。
事件発生から刑事裁判までの流れ1. 事件の発覚・警察への通報
事件が発覚すると、警察は現場の状況、被害状況、関係者の供述などを調べます。被害者が死亡している場合には、死亡原因や死亡に至った経緯も重要な捜査対象になります。
2. 捜査・容疑者の特定
警察は関係者への聞き取りや客観的な証拠の収集などを進め、事件への関与が疑われる人物を特定します。
性的犯罪と殺人の双方が疑われる場合、性的行為の有無だけでなく、加害者の認識や殺意、死亡との因果関係も捜査上の重要な争点になります。
3. 逮捕・送検・起訴
逮捕された場合は、警察から検察庁へ事件が送致され、検察官が証拠や供述を検討します。そのうえで、起訴するか不起訴とするかを判断します。
逮捕や送検は有罪判決を意味しません。被疑者と被告人も、手続上の立場が異なります。
4. 公判・証拠調べ
起訴された事件では、裁判所で公判が開かれます。検察官は犯罪事実を証明するために証拠を提出し、弁護人は被告人の主張や反論を示します。
裁判では、殺意の有無、性的犯罪と死亡結果との関係、犯行の計画性、被告人の責任能力などが争点になる場合があります。
5. 判決・控訴・上告
裁判所は審理を踏まえて有罪・無罪を判断し、有罪の場合は刑罰を言い渡します。判決に不服がある場合には、法律で定められた条件と期間に従って控訴・上告が行われます。
殺人罪や不同意性交等致死傷罪などの重大事件は、裁判員制度の対象となる犯罪に含まれます。裁判員は裁判官とともに、有罪・無罪や有罪の場合の刑罰を判断します。
裁判で注目される主な判断事項強姦殺人に関係する事件では、次のような論点が判決を左右します。
- 性的行為が不同意性交等罪の構成要件に該当するか。
- 被害者の負傷や死亡と犯罪行為に因果関係があるか。
- 被告人に殺意があったか。
- 殺害が計画的だったか、犯行の過程で殺意が形成されたか。
- 被害者の人数や結果の重大性はどの程度か。
- 被告人の年齢、前科、犯行後の態度などをどう評価するか。
とりわけ、殺意の認定は重要です。死亡という結果だけでなく、犯行時の認識や意思を証拠から判断するため、事件によっては裁判が長期化することもあります。
【2026年最新統計】2025年の不同意性交等認知件数4,177件の実態

性犯罪の発生状況を把握する際に重要なのが、警察庁の犯罪統計と内閣府の男女共同参画白書です。
2026年版の男女共同参画白書では、2025年の不同意性交等の認知件数が4,177件と公表されています。これは2024年の3,936件から241件、率にして6.1%増加した数字です。
不同意性交等の認知件数の推移警察庁の犯罪統計を基にした年次比較・単位:件
年ごとの数字を見ると、2023年以降の増加が目立ちます。
- 2022年:1,655件
- 2023年:2,711件
- 2024年:3,936件
- 2025年:4,177件
2023年は前年から約63.8%増加し、2024年も45.2%増加しました。2025年も増加傾向が続いています。
この推移には、2017年と2023年の刑法改正による処罰対象や構成要件の変更、被害申告・相談環境の変化などが関係します。単純に数字の増加だけを見て、実際の被害発生率が同じ割合で増えたと判断することはできません。
4,177件は強姦殺人の件数ではないここは、事件報道やインターネット上の統計解説で特に誤解が生じやすい部分です。
4,177件は不同意性交等の認知件数であり、強姦殺人の件数ではありません。
警察庁の2025年確定統計では、殺人の認知件数は976件です。ただし、この976件には既遂284件と未遂692件が含まれています。したがって、976件をそのまま実際に死亡した人数や殺人既遂事件の数として扱うこともできません。
また、不同意性交等と殺人は、それぞれ別の統計項目として集計されています。通常の犯罪統計から、性的暴行と殺人が重なった事件だけの総数を4,177件から読み取ることはできません。
統計の読み違いを防ぐ3つのポイント
- 4,177件:2025年の不同意性交等の認知件数。
- 976件:2025年の殺人の認知件数。未遂事件も含む。
- 強姦殺人:独立した罪名・統計項目ではないため、上記の数字から直接件数を算出できない。
警察庁が公表した「令和7年の犯罪」の確定資料には、不同意性交等4,177件、殺人976件という別々の集計が掲載されています。
2026年時点で最新の統計を見る方法2026年11月現在、年間を通した比較に使える最新の確定値は2025年分です。警察庁の犯罪統計ページでは、2026年1~9月の暫定資料と、2025年1~12月の確定資料が区別して掲載されています。
統計を調べる際には、次の公的資料を使い分けると情報を整理しやすくなります。
- 警察庁「犯罪統計」:罪種別の認知件数、検挙件数、検挙人員など。
- 警察庁「令和8年警察白書」:犯罪情勢や犯罪統計の年次比較。
- 法務省「犯罪白書」:性犯罪の検挙状況、刑事司法制度、犯罪者処遇など。
- 内閣府「令和8年版男女共同参画白書」:性犯罪・性暴力の被害経験や相談状況、認知件数の推移。
認知件数は警察が犯罪を認知した件数であり、有罪判決の件数や被害者の実人数とは異なります。統計を比較するときには、必ず何を数えた数字なのかを確認する必要があります。
【被害者支援・相談窓口】性犯罪・性暴力に関する公的支援
性犯罪や性暴力の被害は、被害直後だけでなく、時間が経過してから心身に影響が現れることもあります。被害を受けた本人や、身近な人が被害に気付いた場合には、医療・心理・法律の各方面から支援を受けられます。
ワンストップ支援センター「#8891」
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター #8891
「はやくワンストップ」と覚えられる全国共通番号です。電話すると、最寄りのワンストップ支援センターにつながります。
主な支援内容は次のとおりです。
- 産婦人科などの医療機関との連携。
- 緊急避妊薬や性感染症検査などの医療的支援。
- カウンセリングなどの心理的支援。
- 警察への相談や同行支援。
- 弁護士などの専門家につなぐ法律相談。
携帯電話やNTTアナログ固定電話から利用できます。NTTひかり電話には専用の番号が設けられています。一部のIP電話などでは利用できない場合があります。
警察の性犯罪被害相談電話「#8103」
警察の性犯罪被害相談電話#8103
「ハートさん」と呼ばれる警察の性犯罪被害相談電話です。最寄りの都道府県警察の相談窓口につながります。
警察への相談を検討している場合や、被害についてどのように対応すればよいか迷っている場合に利用できます。
性暴力に関するSNS相談「Cure time」電話で話すことに抵抗がある場合には、内閣府が案内するSNS相談「Cure time(キュアタイム)」も選択肢になります。
チャットで相談できるほか、メールや外国語での相談にも対応する仕組みがあります。相談方法や受付時間は公式案内で確認できます。
内閣府の令和8年版男女共同参画白書によると、2023年度の調査では、不同意性交等の被害経験がある人のうち、55.7%が誰にも相談しなかったと回答しています。
相談することにためらいを感じる人は少なくありません。被害者の意思を尊重し、無理に説明や決断を求めず、専門の支援機関につなぐことが大切です。
【強姦殺人の意味・法律】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:強姦殺人罪という正式な罪名はありますか?
A1:ありません。「強姦殺人」は一般的な表現です。現行法では、事件の内容に応じて不同意性交等罪、不同意性交等致死傷罪、殺人罪などが適用されます。
Q2:不同意性交等致死傷罪の法定刑はどれくらいですか?
A2:刑法181条2項では、無期または6年以上の拘禁刑と定められています。殺意が認定される場合には、刑法199条の殺人罪も問題となり、その法定刑は死刑、無期または5年以上の拘禁刑です。
Q3:2025年の不同意性交等4,177件は、強姦殺人事件の件数ですか?
A3:違います。4,177件は不同意性交等の認知件数です。殺人事件や強姦殺人の件数を示す数字ではありません。殺人の認知件数は別に集計されています。
Q4:2023年の刑法改正はいつ施行されましたか?
A4:2023年7月13日です。この改正で強制性交等罪が不同意性交等罪に改められ、同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態などを中心とした構成要件が導入されました。
「ごうかんさつじん」は、一般に「強姦殺人」と表記される重大犯罪を説明する言葉です。しかし、刑法上は独立した罪名ではなく、不同意性交等罪、不同意性交等致死傷罪、殺人罪などの関係から事件を理解する必要があります。
2026年現在、押さえておきたい要点は次の5つです。
1. 「強姦殺人」は一般的な呼称で、現行刑法上の正式な独立罪名ではない。
2. 2017年7月13日に強姦罪が強制性交等罪へ変更された。
3. 2023年7月13日に不同意性交等罪が施行された。
4. 不同意性交等致死傷罪は無期または6年以上の拘禁刑、殺人罪は死刑・無期・5年以上の拘禁刑が法定刑となる。
5. 2025年の不同意性交等認知件数4,177件は、強姦殺人や殺人事件の件数ではない。
特に重要なのは、事件報道に登場する「容疑」「逮捕」「起訴」「判決確定」を混同しないこと、そして統計の数字が何を集計したものなのかを確認することです。
性犯罪に関する法制度は、2017年、2023年、2025年と段階的に変化しています。過去の事件を調べる際には犯行時の法律を、現在の事件を理解する際には現行刑法を参照する必要があります。
今後も警察庁の犯罪統計、法務省の犯罪白書、内閣府の男女共同参画白書を照合することで、性犯罪の実態と刑事司法の動向をより正確に把握できます。重大事件の報道を読む際には、被害者の尊厳を守りながら、法律上の事実と統計上の事実を分けて理解する姿勢が大切です。