「吟じます!」という一言を聞いて、お笑い芸人・天津木村の独特な節回しと「あると思います!」という決めゼリフを思い出す人は多いのと考えられます。このフレーズは、2008年から2009年にかけて大ブレイクした「エロ詩吟」の代名詞です。伝統芸能の詩吟に下ネタを組み合わせるという異色の芸風で、当時のお笑い番組やバラエティー番組を大いに盛り上げました。
実は、「吟じます」は単なるお笑いの決めゼリフではありません。天津木村こと木村卓寛が身につけていた詩吟の技術、芸人仲間からのアドバイス、テレビ番組での思いがけない反響が重なって生まれたものです。2026年現在、木村は岩手県を拠点に活動を続けており、かつての決めゼリフも新しい形で使われています。
【意味を解説】「吟じます」とは何?本来の意味と天津木村の決めゼリフ

「吟じます」は、動詞の「吟じる」に丁寧語の「ます」を付けた表現です。詩歌を声に出して詠み、独特の節や調子を付けて表現することを意味します。
日常的な言葉としては、「これから詩を吟詠します」「詩を節を付けて表現します」という意味合いです。もともと性的な意味や下ネタを表す言葉ではありません。
天津木村によって広まった独特の使い方お笑いの世界で「吟じます」といえば、天津の木村卓寛が披露するエロ詩吟を指す場合がほとんどです。
ネタでは、まず「吟じます!」と宣言し、日常生活や男女関係にまつわる少しエッチな状況を、詩吟風の節回しで歌い上げます。そして最後に「あると思います!」と締めくくります。
普通なら会話で説明するような出来事を、あえて厳かな詩吟の調子で表現する。この大げさな演出と内容のギャップが笑いを生み出しました。
「吟じます」の使い方は?日常会話でも使える?現在では、天津木村のネタを知っている人同士なら、冗談やパロディーとして使える表現です。
例えば、友人が休日の予定を楽しそうに話しているときに「では、吟じます!」と前置きすれば、これから何かを大げさに発表するという笑いの演出になります。
また、日常のあるあるネタを発表するときに使う方法もあります。
- 友人の遅刻癖を面白おかしく詠む前に「吟じます!」
- 仕事や学校でありがちな出来事を詩のように表現する。
- 最後に「あると思います!」と付けてオチを作る。
ただし、仕事上の正式な発表や目上の人との改まった会話には向きません。あくまで親しい相手との軽い冗談として使うのが自然です。
【詩吟との違い】エロ詩吟とは何?伝統芸能との関係を解説
エロ詩吟を理解するには、元になった「詩吟」を知っておく必要があります。
公益社団法人日本詩吟学院によると、詩吟とは漢詩や和歌など、さまざまな詩に節を付け、自分の声で表現する芸術です。作品に込められた喜びや悲しみ、作者の感情などを声で表現することに特徴があります。
つまり、詩吟は単に大きな声で詩を読むものではありません。発声、節回し、呼吸、詩の意味を理解した表現などが組み合わさった伝統的な芸道です。
天津木村がエロ詩吟を生み出せた理由木村卓寛には、芸人としての活動とは別に詩吟の経験がありました。日刊ゲンダイの2015年のインタビューによると、祖父の代から詩吟教室を営む家庭で育ち、本人も師範代の資格を持っていました。
父親も詩吟の師範だったと報じられています。つまり、エロ詩吟はまったくの素人が詩吟をまねて作ったネタではなく、本人が実際に身につけていた技術をお笑いに応用したものです。
本格的な節回しで下ネタを歌い上げるからこそ、内容との落差が際立ちました。伝統芸能の技術が、まったく異なる笑いの表現に転用された点が、この芸風の大きな特徴です。
詩吟とエロ詩吟の違いを比較| 比較項目 | 伝統的な詩吟 | 天津木村のエロ詩吟 |
|---|---|---|
| 目的 | 詩歌の内容や感情を表現する | 笑いを生み出す |
| 題材 | 漢詩、和歌、俳句など | 男女関係や日常のあるあるネタ |
| 表現方法 | 節回しや声の強弱を使った吟詠 | 詩吟の節回しを使ったコミカルな表現 |
| 締め方 | 作品の内容に応じて吟じ終える | 「あると思います!」でオチを付ける |
| 位置付け | 日本の伝統的な芸道・芸術 | お笑い芸人による独自のネタ |
両者の違いは、表現技術よりも目的と題材にあります。エロ詩吟は詩吟そのものの新しい流派ではなく、詩吟の技法を取り入れたコメディーです。
一方で、伝統芸能と性的な題材を結び付けたことから、詩吟関係者から反発を招いたこともありました。2016年に放送された「しくじり先生」関連の報道でも、木村が詩吟界からの批判やネタの過激化について振り返る内容が紹介されています。
伝統芸能への敬意と、お笑いとしての自由な表現。その境界をめぐる問題も、エロ詩吟を語るうえで外せない部分です。
【元ネタを検証】天津木村のエロ詩吟はどうやって誕生した?
「吟じます」の元ネタを調べると、特定の漫画やアニメ、楽曲、映画などから引用したセリフではないことが分かります。
誕生のきっかけは、お笑いコンビ・麒麟のラジオ番組でした。当時、芸人として伸び悩んでいた木村が、自分の特技として詩吟を披露したことから話が動き始めます。
最初は詩吟だけで笑いを取れなかった2021年のマイナビニュースは、木村が次長課長・河本準一のYouTubeチャンネルに出演した際の発言を紹介しています。
木村によると、麒麟のラジオ番組で特技を尋ねられ、詩吟の師範代であることを伝えて披露したものの、最初は反応がいまひとつでした。
そこで麒麟から提案されたのが、詩吟に「あるある」の要素を加えることです。木村自身が興味を持っていた男女関係の話題を題材にしたところ、即興のエロ詩吟が大きな笑いを生みました。
この出来事が、後に全国的な人気を獲得するネタの原型になったのです。
「吟じます」と「あると思います」は別々の助言から定着興味深いのは、現在ではセットで知られる二つの決めゼリフが、最初から完成した形で生まれたわけではないことです。
マイナビニュースの2021年の記事によると、「あると思います!」は、テレビ番組でネタがうまくいかなかった際、木村がとっさに口にした言葉でした。それが予想外に受け、ブラックマヨネーズの吉田敬から、今後も使い続けるよう勧められたといいます。
一方、「吟じます!」という始まり方については、サバンナの高橋茂雄からの助言がきっかけでした。詩吟を披露する前に宣言を入れることで、ネタの形式が分かりやすくなったのです。
木村自身も、これらのアイデアについて、自分だけで作り上げたという感覚はないと振り返っています。
麒麟の提案、ブラックマヨネーズ吉田の助言、サバンナ高橋の助言。先輩芸人たちとの交流が、エロ詩吟という独自の芸風を完成させていきました。
【ブレイクの経緯】爆笑レッドカーペットと「あると思います」の大ヒット
エロ詩吟が誕生した後、木村の知名度を一気に押し上げたのが、関西の深夜番組と全国ネットのバラエティー番組でした。
特に大きな転機となったのが、MBSの「オールザッツ漫才」です。2015年の日刊ゲンダイのインタビューでは、2007年末の同番組で披露したネタの直後、放送上の不適切表現について謝罪するテロップが流れたことが紹介されています。
直接的な言葉を使っていなかったにもかかわらず、番組側が謝罪テロップを出したという出来事は、芸人の間でも話題になりました。結果的に、この話が東京のテレビ関係者にも伝わり、出演機会が広がっていきます。
2008年の爆笑レッドカーペットで全国区へ木村はテレビ東京系「やりすぎコージー」やフジテレビ系「爆笑レッドカーペット」などに出演。特に短いネタを次々と披露する「爆笑レッドカーペット」は、エロ詩吟との相性がよい番組でした。
Apple TVに掲載されている同番組の2008年11月5日放送回の紹介にも、天津木村がエロ詩吟を披露したことが記録されています。
短い出演時間でも「吟じます!」という宣言、独特の節回し、最後の「あると思います!」という構成が伝わるため、視聴者の記憶に残りやすかったのです。
2009年には流行語大賞にノミネートブームの勢いは、テレビ出演だけにとどまりませんでした。
2008年にはネタ本『天津木村のエロ詩吟、吟じます。』が出版され、2009年には続編も発売。吉本興業の2018年のライブレポートでは、2冊の累計販売部数が15万部に達したと紹介されています。
加えて、2009年には「あると思います!」が新語・流行語大賞にノミネートされました。芸人のネタから生まれた言葉が、テレビを見ない人にも伝わるほどの認知度を獲得したのです。
天津木村のキャリアを時系列で整理| 時期 | 出来事 | 意味・影響 |
|---|---|---|
| 1999年 | 向清太朗と漫才コンビ「天津」を結成 | お笑い芸人として活動開始 |
| 2007年末 | 「オールザッツ漫才」でエロ詩吟を披露 | 謝罪テロップが話題になり、注目を集める |
| 2008年 | 「爆笑レッドカーペット」などに出演 | エロ詩吟が全国的に知られる |
| 2008~2009年 | エロ詩吟関連の書籍を出版 | 2冊の累計販売部数は15万部と紹介された |
| 2009年 | 「あると思います!」が流行語大賞にノミネート | 決めゼリフが社会的な認知を獲得 |
| 2010年頃 | テレビ出演や収入が減少 | ブーム後のキャリア転換を経験 |
| 2021年 | 岩手県に移住し「Go!Go!いわて」のMCに就任 | 地域密着型の活動へ転換 |
| 2026年 | 岩手を拠点にテレビ・イベントなどで活動 | 「あると思います!」も新たな場面で披露 |
この年表から分かるのは、エロ詩吟が単なる一発ギャグではなく、木村の芸人人生そのものを大きく変えた転機だったということです。
【決めゼリフの秘密】「あると思います」と「吟じます」の関係・今も使われる理由
「吟じます」と「あると思います」は、同じネタの中で使われるものですが、役割は異なります。
二つの言葉には明確な役割の違いがある「吟じます!」は、これから詩吟風のネタを披露するという開始の合図です。一方の「あると思います!」は、ネタの最後に置かれる締めの言葉です。
基本的な流れは次のようになります。
- 「吟じます!」と宣言する。
- 男女関係や日常生活のあるあるを題材にする。
- 詩吟特有の節回しで状況を歌い上げる。
- 「あると思います!」でオチを付ける。
また、「なんだか今日いけそうな気がする~」というフレーズも木村を象徴する言葉として知られています。これらの言葉が組み合わさることで、エロ詩吟の独特なリズムと期待感が生まれました。
なぜ「あると思います」は印象に残ったのか最大の理由は、ネタの内容を視聴者の日常感覚に結び付ける力にあります。
エロ詩吟は、単純に下ネタを並べるだけではありません。男女の間で起きそうな出来事や、誰もが一度は想像したことのある状況を大げさに表現します。
その後に「あると思います!」と断言することで、視聴者に共感を促します。ネタの内容に心当たりがある人ほど、最後の一言に反応しやすくなる仕組みです。
また、独特の間も重要でした。詩吟風の節回しで期待を高め、最後の一言を強調することで、短時間でも笑いのポイントが明確になります。
ブームが終わっても言葉が残っている理由「あると思います!」が長く記憶されているのは、短くて覚えやすく、さまざまな話題に応用できるからです。
例えば、スポーツの試合前に「今日の勝利、あると思います!」と使ったり、何かに挑戦するときに前向きな意味を込めて使ったりできます。
2026年9月2日には、岩手県盛岡市のきたぎんボールパークで行われた楽天イーグルス対オリックス戦のセレモニアルピッチに木村が登場しました。
パ・リーグ公式メディアの報道によると、木村はマウンド上で楽天の勝利を願う一句を吟じ、投球後には「楽天イーグルスの勝利、あると思います!」とコメントしています。
かつてはエロ詩吟のオチとして使われていた言葉が、現在では地域イベントやスポーツの応援にも生かされています。これは、決めゼリフが元のネタから独立して、木村自身を象徴する表現になっていることを示す出来事です。
【2026年現在】天津木村は何をしている?岩手移住後の活動と現在地
「吟じます」で全国的な人気を獲得した天津木村ですが、現在も芸能活動を続けています。
2026年11月現在の活動を知るうえで注目したいのが、岩手県への移住と、岩手朝日テレビの情報番組「Go!Go!いわて」です。
2021年に岩手県へ移住した理由木村は2021年、岩手朝日テレビの情報番組「Go!Go!いわて」のMC就任をきっかけに岩手県へ移住しました。
当初は東京から岩手へ通うつもりだったといいます。しかし、当時運転手を務めていたタレントのヒロミに報告したところ、仕事を引き受ける覚悟について考えるよう促されたことが、移住の決断につながりました。
2026年4月26日公開の東洋経済オンラインのインタビューでは、木村自身が移住に至った経緯や、岩手で仕事を築いてきた過程を振り返っています。
岩手での生活は、単に出演番組を一つ増やすための選択ではありませんでした。地域の人々と同じ場所で暮らし、土地の魅力を発信しながら、自分の活動基盤を作り直す決断だったのです。
2026年も「Go!Go!いわて」のMCとして活躍岩手朝日テレビの公式番組ページでは、2026年11月7日の次回放送予定が掲載され、MCとして天津木村の名前が記載されています。
同番組は2021年4月3日にスタートした地域密着型の情報番組です。岩手県内の人や場所、地域独自の魅力を紹介する内容で、木村は「いわて応援芸人」として出演しています。
番組内の人気コーナー「天津木村のどっかええトコありますか?」では、県内各地を訪れ、地元の魅力を紹介しています。
また、2026年の公的な地域イベント関連情報でも、木村が岩手で活動する芸人として紹介されています。9月の楽天戦でのセレモニアルピッチも、地域での知名度と活動の広がりを示す出来事でした。
一発屋から地域に愛される芸人へ木村のキャリアには、ブレイクと低迷という大きな波がありました。
東洋経済オンラインの2026年4月のインタビューでは、2009年に流行語大賞へノミネートされた後、2010年頃から仕事が急減し、月収が3桁万円から1桁万円に落ち込んだ経験も語られています。
当時は家族を養うためにアルバイトをするなど、芸人として厳しい時期を経験しました。その後、ヒロミの運転手を務めた時期を経て、岩手への移住を決断します。
現在の木村は、全国ネットの番組に出演することだけを目標にするのではなく、岩手や東北で自分の役割を築いています。
ここに、エロ詩吟のブーム後も活動を続けられている理由があります。全国的な知名度を持つ芸人が、その知名度を地域の情報発信に生かし、住民との関係を築いてきたのです。
「吟じます」という過去の看板ネタは今も知られていますが、2026年の木村を語る際には、岩手での活動も欠かせない要素になっています。
【よくある誤解を整理】「吟じます」に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「吟じます」の元ネタは何ですか?
A1:特定の漫画や楽曲などが元ネタではありません。天津木村が麒麟のラジオ番組で詩吟を披露し、あるあるネタを加えるよう助言されたことが、エロ詩吟誕生のきっかけです。
Q2:「吟じます」と「あると思います」は同じ意味ですか?
A2:意味も役割も異なります。「吟じます!」はネタを始める宣言で、「あると思います!」は詩吟風のネタを締めくくる決めゼリフです。
Q3:エロ詩吟は本物の詩吟なのですか?
A3:詩吟の節回しや発声技術を取り入れたお笑いネタです。伝統芸能としての詩吟とは、目的や題材、表現の位置付けが異なります。
Q4:天津木村は現在も芸人として活動していますか?
A4:はい。2026年現在も芸能活動を続けています。岩手県に移住し、岩手朝日テレビの「Go!Go!いわて」でMCを務めるなど、地域密着型の活動を展開しています。
Q5:「あると思います!」は流行語大賞を受賞したのですか?
A5:2009年の新語・流行語大賞にノミネートされました。ノミネートと年間大賞の受賞は異なるため、受賞したとするのは正確ではありません。
Q6:「吟じます」は日常会話で使ってもよいですか?
A6:親しい友人との冗談や、あるあるネタを披露するときに使えます。ただし、天津木村の芸風を知っている相手のほうが意図が伝わりやすく、改まった場面には向きません。
「吟じます」は、本来は詩を節に乗せて表現することを宣言する言葉です。その言葉をお笑いの世界で広く知らしめたのが、天津の木村卓寛でした。
エロ詩吟の誕生には、家庭で身につけた詩吟の技術、麒麟のラジオ番組での即興ネタ、サバンナ高橋やブラックマヨネーズ吉田の助言など、複数の要素が関係しています。
2007年末の「オールザッツ漫才」をきっかけに注目され、2008年の「爆笑レッドカーペット」などへの出演で人気が拡大。2009年には「あると思います!」が流行語大賞にノミネートされるほどの社会現象になりました。
そして2026年現在、木村は岩手県を拠点に「Go!Go!いわて」のMCなどを務め、地域に根差した芸能活動を続けています。9月のプロ野球公式戦でも「あると思います!」を披露し、かつての決めゼリフが今も生きていることを示しました。
「吟じます」が長く記憶されている理由は、単に面白い言葉だったからではありません。伝統芸能と現代のお笑いを組み合わせた独創性、短く覚えやすい決めゼリフ、そして天津木村という芸人の歩みが結び付いているからです。
エロ詩吟の全盛期を知る人にとっては懐かしいフレーズであり、当時を知らない世代にとっては、独特のリズムを持つお笑いの定番表現でもあります。
これからも天津木村の活動とともに、「吟じます!」という言葉がどのような場面で飛び出すのか注目したいところです。