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【井上章一の経歴・略歴】京都大学で建築を学んだ研究者の歩み

長谷川 陸 長谷川 陸 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
目次

井上章一氏は、1955年、京都市生まれ。京都という土地の歴史や文化を身近に感じられる環境で育ち、京都大学工学部建築学科へ進学しました。

1978年3月に同学科を卒業し、1980年3月には京都大学大学院工学研究科建築学専攻の修士課程を修了しています。

研究者としての出発点は建築でしたが、その関心は建物の形状や様式だけにとどまりません。建築を取り巻く価値観、生活習慣、社会の変化へと研究対象を広げていったことが、現在の幅広い著作につながっています。

京都大学から国際日本文化研究センターへ

1980年4月、京都大学人文科学研究所の助手に就任。その後、1987年5月に国際日本文化研究センター(日文研)の助教授となりました。

2002年には教授、2013年には副所長を務め、2020年4月に同センターの所長に就任しています。

ここで押さえておきたいのは、京都大学出身であることと、京都大学の教員として現在活動していることは別だという点です。井上氏のその後の研究・教育活動の主要な所属先は国際日本文化研究センターです。

井上章一の経歴・年表

日文研の研究者紹介と所長選出に関する公式発表をもとに、主要な転換点をまとめました。

時期 経歴・出来事 意味・実績 1955年 京都市生まれ 研究者としての出発点 1978年3月 京都大学工学部建築学科卒業 建築学を専門的に学ぶ 1980年3月 京都大学大学院修士課程修了 建築学専攻 1980年4月 京都大学人文科学研究所助手 研究者としてのキャリアを開始 1986年 サントリー学芸賞受賞 『つくられた桂離宮神話』を中心とする業績 1987年5月 国際日本文化研究センター助教授 日本文化研究へ活動を展開 2002年10月 同センター教授 研究活動を継続・発展 2013年4月 同センター副所長 研究機関の運営にも携わる 2015~2016年 『京都ぎらい』刊行・新書大賞受賞 一般読者にも広く知られる 2020年4月 日文研所長に就任 研究機関の代表を務める 2025年11月 所長への再任が発表される 次期任期が正式決定 2026年4月 所長に再任 任期は2028年3月31日まで

この年表から見えてくるのは、井上氏が建築学を出発点に、文化史研究、著述活動、研究機関の運営へと活動領域を広げてきたことです。

1986年の受賞は、一般向けのベストセラー作家として知られる以前から、建築史研究で評価を受けていたことを示す重要な出来事です。

【井上章一の研究テーマ】建築史・風俗史・関西文化論の独自性

井上章一

井上章一氏の研究を理解するうえで重要なのが、建築史と風俗史という2つの専門領域です。

日文研の公式プロフィールでは、専門分野を風俗史とし、研究テーマについては、近代化の過程で人々の暮らしがどう変化したのかを追究するものと説明しています。

単に昔の生活習慣を紹介するのではありません。

当たり前だと思っている習慣が、いつ、どのような社会的背景から生まれ、定着したのか。その変化を歴史資料や文化的な表現から読み解くことに特徴があります。

1.建築史:桂離宮をめぐる評価の形成を問い直す

『つくられた桂離宮神話』は、井上氏の初期の代表的研究です。

桂離宮は、日本建築を代表する存在として国内外で評価されてきた建築文化の重要な対象です。

井上氏は、その美しさがどのように語られ、評価され、いわば日本建築の理想像として定着していったのかという問題に切り込みました。

建物そのものだけでなく、建築を評価する側の思想や時代背景にも目を向けた研究です。

1986年には、この著作を中心とする業績によってサントリー学芸賞の芸術・文学部門を受賞しています。

サントリー文化財団の選評には、作品の独創的な文章表現を評価する意見と、資料の扱いや論述のレトリックに疑問を呈する意見の双方が記録されています。受賞に至る過程で活発な議論があったことも、この研究の刺激的な性格を物語っています。

2.風俗史:日常生活の中にある歴史を掘り起こす

井上氏の風俗史は、衣服、身体、住居、性意識、生活習慣など、普段は歴史研究の中心になりにくい題材を扱います。

代表例が『パンツが見える。―羞恥心の現代史―』や『ふんどしニッポン』です。

例えば、明治以降、日本人の服装は西洋化していきました。しかし、洋服の普及と下着の変化は必ずしも同じ速度で進んだわけではありません。

こうした衣服の内側に残った文化的な特徴を追うことで、近代日本の価値観や身体意識の変化が浮かび上がります。

風俗史という言葉から想像される珍しい習慣の紹介とは異なり、井上氏の研究は、生活の細部を通じて社会全体の変化を考察するものです。

3.関西文化論:京都と大阪の地域意識を読み解く

井上氏の著作には、京都や大阪、関西人の気質を扱ったものも多くあります。

特に『京都ぎらい』『京都まみれ』『関西人の正体』などは、地域社会にある独特の価値観や人間関係を題材にしています。

京都という都市は、長い歴史や伝統文化によって全国的な憧れを集める一方、地域内部には独自の区分や意識が存在してきました。

井上氏の関西文化論は、外から見た京都のイメージと、実際に暮らす人々が感じる地域社会の複雑さとの違いに注目しています。

つまり、井上章一氏の研究に共通するのは、美しいもの、伝統的なもの、当たり前のものが、どのような歴史的経緯で現在の姿になったのかを問い直す姿勢です。

【井上章一の著書一覧】京都ぎらい・ふんどしニッポンなど代表作を紹介

井上章一氏は、建築史から日本の生活文化、地域論、身体や服装の歴史まで、幅広い著作を発表してきました。

著書を選ぶ際には、テーマごとに分類すると研究の全体像がつかみやすくなります。

代表的な著書と刊行年



『つくられた桂離宮神話』

1986年・弘文堂
建築史研究の代表作。桂離宮をめぐる評価や日本建築美の形成を問い直す。


『霊柩車の誕生』

1984年
葬送文化や霊柩車の成立を通して、近代日本の生活文化を考察する初期の著作。


『南蛮幻想―ユリシーズ伝説と安土城』

1998年・文藝春秋
南蛮文化や安土城を題材に、日本と西洋の文化的接触を考える著作。芸術選奨文部大臣賞の受賞対象となった。


『パンツが見える。―羞恥心の現代史―』

2002年・朝日選書
下着や身体の見せ方を題材に、日本人の羞恥心の変遷を追う。


『京都ぎらい』

2015年・朝日新書
京都内部の地域意識や洛中・洛外の関係を取り上げた代表的ベストセラー。


『京都まみれ』

2020年・朝日新書
京都をめぐるイメージや地域文化をさらに掘り下げた著作。


『ふんどしニッポン―下着をめぐる魂の風俗史』

2022年・朝日新書
日本の男性下着の変遷から、西洋化と日本独自の身体文化の関係を読み解く。


『海の向こうでニッポンは』

2023年・平凡社新書
海外との関係から日本文化を考える著作。


『ヤマトタケルの日本史―女になった英雄たち』

2024年・中央公論新社
ヤマトタケルの物語を手がかりに、英雄像と性別表現の歴史を考察する。


『関西人の正体〈増補版〉』

2025年・朝日新聞出版
関西の地域性や人々のイメージを題材にした文化論。


刊行年・書誌情報は日文研の研究者業績一覧を中心に整理した代表作です。全著作を網羅した一覧ではありません。

『京都ぎらい』が幅広い読者に届いた理由

『京都ぎらい』は2015年9月11日に刊行され、2016年2月に発表された「新書大賞2016」で第1位に選ばれました。

朝日新聞出版の発表によると、選考には書店員、書評家、出版社の新書編集者など82人が参加しています。

同書が扱うのは、単純な京都批判ではありません。

京都育ちの著者自身が、洛中と洛外の意識の違いや、京都の人間関係、地域に根付く独特の価値観を取り上げています。

京都を外から眺める観光案内や歴史紹介とは異なり、住民の視点から都市の内側にある複雑さを描いた点が特徴です。

タイトルの強い印象だけで内容を判断するよりも、地域社会をめぐる文化論として読むと、本書の問題意識が理解しやすくなります。

『ふんどしニッポン』は何を明らかにしたのか

2022年5月刊行の『ふんどしニッポン』は、男性の下着を中心に近代日本の身体文化を考察した作品です。

明治期以降、洋服が普及しても、下着のあり方は単純に西洋式へ統一されたわけではありませんでした。

本書では、ふんどしとパンツの関係をはじめ、服装の西洋化、近代日本の価値観、三島由紀夫にまつわる文化的イメージなどが扱われています。

国立国会図書館の書誌情報でも、同書は下着の歴史を扱う社会・風俗分野の資料として登録されています。

【井上章一の現在・2026年最新】日文研所長再任と新刊の全貌

2026年の井上章一氏をめぐる大きな動きは、所長再任と新著の刊行です。

研究者としての活動を継続しながら、一般読者に向けた日本文化論も発表しています。

2026年4月、国際日本文化研究センター所長に再任

日文研は2025年11月28日、井上氏の所長再任を正式に発表しました。

新しい任期は次のとおりです。

- 再任開始:2026年4月1日
- 任期終了:2028年3月31日
- 任期:2年間

2026年4月1日現在の同センターの運営組織にも、所長として井上章一氏の名前が掲載されています。

したがって、2026年11月現在も、井上氏は日文研所長を務めています。

国際日本文化研究センターは、日本文化に関する国際的・学際的な研究を進める機関です。

井上氏の専門である風俗史や近代日本文化史は、建築、歴史、社会、生活習慣など複数の分野を横断する研究と関係しています。

所長という立場では、自身の著作活動に加えて、研究機関の運営にも携わることになります。

2026年7月23日発売『日本人はなぜ家で靴を脱ぐのか』

2026年7月23日発売

2026年の新刊として注目されるのが、新潮選書の『日本人はなぜ家で靴を脱ぐのか―土足禁止の精神史―』です。

- 著者:井上章一
- 出版社:新潮社
- 発売日:2026年7月23日
- ページ数:256ページ
- 定価:1,815円(税込)
- ISBN:978-4-10-603948-5

この本の出発点は、著者がブラジルの病院で経験した出来事です。

治療用のベッドに横になろうとした際、靴を脱ごうとしたところ、現地の医師から注意を受けたという体験が紹介されています。

日本では、家や病院などの室内に入る際に靴を脱ぐことが自然な行動として受け止められています。しかし、海外では同じ感覚が共有されるとは限りません。

この文化的な違いをきっかけに、井上氏は日本の土足禁止の習慣を歴史的に検討しています。

新刊で取り上げられる主なテーマ

新潮社の公式書籍紹介や目次からは、次のような論点が確認できます。

- 南蛮屏風と西洋文化: 日本と西洋の履物・室内習慣の違いを考える。
- 江戸・明治期の絵画: 過去の生活風景から履物の扱いを読み解く。
- 昭和の生活写真: 近代以降の住まいと靴の関係をたどる。
- スリッパの歴史: 室内履きが普及する過程や使われ方を考察する。
- 占領期と戦後の住宅: アメリカ文化との接触も含め、住居と履物の変化を検討する。
- 公共空間と履物: 家庭だけではない土足・脱靴の境界を考える。

注目したいのは、靴を脱ぐという日常的な行為を、日本独自の伝統として単純化していない点です。

住宅の近代化、外国文化との接触、階層や地域の違いなど、さまざまな要素を組み合わせて考える構成になっています。

『ふんどしニッポン』で下着の歴史を扱った井上氏が、今度は履物と住居の関係を取り上げたことにも、研究テーマの一貫性が表れています。

【井上章一の評価と独自性】誤解されやすいポイントを検証

井上章一氏は、一般読者に知られる著書の題名が印象的なため、京都論や風俗を面白く語る評論家というイメージを持たれることがあります。

しかし、研究者としての歩みを確認すると、建築学の専門教育を受け、建築史研究で受賞し、長年にわたり日本文化研究の機関で活動してきた人物です。

誤解されやすい3つのポイント

誤解1:京都大学の教授として活動している?

井上氏は京都大学工学部と大学院で学び、京都大学人文科学研究所の助手も経験しています。しかし、その後は国際日本文化研究センターに移り、同センターの教授や副所長を歴任しました。2026年現在の役職は日文研所長です。

誤解2:『京都ぎらい』は京都を否定するだけの本?

タイトルは刺激的ですが、中心にあるのは京都の地域社会や住民意識への考察です。京都の外部イメージと内部の価値観のずれを読み解く文化論として捉えると理解しやすくなります。

誤解3:風俗史は珍しい風習を集める学問?

井上氏の研究は、珍しい習慣を紹介するだけではありません。下着や靴、住居といった生活の具体的な事例を通じ、近代化や文化交流が人々の価値観をどう変えたかを検討しています。

井上章一の著作を読むなら、どの作品から始めるべきか

関心のあるテーマによって、入り口となる著書は変わります。

読者の関心 おすすめの著書 読むポイント
京都の歴史や地域意識 『京都ぎらい』 京都社会の内側にある価値観
日本建築の歴史 『つくられた桂離宮神話』 建築美の評価が形成される過程
身体・服装の歴史 『ふんどしニッポン』 下着と近代化の関係
日本人の生活習慣 『日本人はなぜ家で靴を脱ぐのか』 土足禁止と住居文化の歴史
英雄や性別表現の歴史 『ヤマトタケルの日本史』 古代の英雄像と文化的解釈

特に、初めて井上氏の著作を読む人には『京都ぎらい』が入り口になります。読みやすい文化論から入り、関心が深まったら建築史や風俗史の専門的なテーマへ進む方法があります。

一方、建築史の研究者としての原点を知りたい人は『つくられた桂離宮神話』から読むと、現在の著作につながる問題意識を理解しやすくなります。

【プロの結論】井上章一の本質は「当たり前を歴史に変える視点」にある

井上章一氏の研究を一つの軸で捉えるなら、それは、日常生活に埋め込まれた歴史を発見することです。

桂離宮の評価、京都の地域意識、ふんどしやパンツ、そして玄関で靴を脱ぐ習慣。これらは一見すると異なるテーマですが、共通しているのは、現在の常識がどのように成立したのかを問い直している点です。

専門研究と一般向けの著作を結びつける力は、こうした研究姿勢から生まれています。

また、1986年のサントリー学芸賞と2016年の新書大賞という異なる性格の受賞歴は、建築史研究と一般向けの文化論という両方の領域で評価を受けてきた経歴を示しています。

読者が著作を評価する際には、刺激的なタイトルだけで判断せず、どの資料を使い、どの歴史的事実をもとに、どのような解釈を提示しているかに注目すると、研究の面白さをより深く理解できます。

【井上章一に関するよくある質問(FAQ)】

Q1:井上章一は現在、何をしている人ですか?

A1:2026年11月現在、国際日本文化研究センターの所長です。2026年4月1日に再任され、任期は2028年3月31日までです。日本文化や風俗史に関する研究・著述活動も続けています。

Q2:井上章一は京都大学出身ですか?

A2:はい。1978年に京都大学工学部建築学科を卒業し、1980年に同大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了しています。その後、京都大学人文科学研究所の助手を経て、国際日本文化研究センターに移りました。

Q3:井上章一の代表作『京都ぎらい』は何賞を受賞しましたか?

A3:2016年に「新書大賞2016」の第1位に選ばれました。京都内部の地域意識や人間関係を独自の視点で描いた作品です。

Q4:井上章一のサントリー学芸賞の受賞作は何ですか?

A4:1986年、芸術・文学部門で『つくられた桂離宮神話』を中心とする業績が受賞対象となりました。建築史研究者として評価された初期の重要な実績です。

Q5:井上章一の2026年の新刊は何ですか?

A5:新潮選書から刊行された『日本人はなぜ家で靴を脱ぐのか―土足禁止の精神史―』です。2026年7月23日発売で、日本人の脱靴習慣を歴史や海外文化との比較から考察しています。

井上章一氏は、京都大学で建築学を学び、建築史研究からキャリアをスタートさせた日本文化研究者です。

その後、風俗史や関西文化論へと研究対象を広げ、『つくられた桂離宮神話』でサントリー学芸賞、『京都ぎらい』で新書大賞2016を受賞しました。

2026年の活動では、4月の国際日本文化研究センター所長再任と、7月の新刊『日本人はなぜ家で靴を脱ぐのか』が大きな節目となっています。

井上氏の著作を理解する鍵は、建築や服装、地域社会といった身近な題材を通じて、日本人の価値観が形成されてきた歴史を考えることです。

華やかな京都論だけではなく、建築史・風俗史という専門的な研究の蓄積を踏まえて読むことで、その著作の奥行きが見えてきます。2028年3月まで続く所長任期と、今後発表される研究・著作にも注目したいところです。

主な参照資料:国際日本文化研究センター公式研究者プロフィール・所長再任発表・運営組織資料、サントリー文化財団の受賞者記録、朝日新聞出版の書籍情報、新潮社の著者プロフィール・新刊情報、国立国会図書館の書誌情報。

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長谷川 陸

放送中アニメと原作漫画を担当。制作委員会の公式発表、出版社の単行本情報、声優事務所プロフィールを一次情報として扱い、話数や期の情報は公式サイトで確認します。

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