大相撲の懸賞金は、2019年9月場所以降、1本7万円(税込)に設定されています。日本相撲協会の公式案内では、7万円のうち1万円が協会の手数料、残り6万円が勝った力士の獲得分とされています。
協会が受け取る1万円は、単なる仲介手数料ではありません。取組表へのスポンサー名の掲載や、取組前の場内アナウンスなど、広告サービスに対する費用です。
1本7万円はどう分配される?現在の仕組みを整理すると、次のようになります。
- スポンサーが支払う金額:7万円
- 日本相撲協会の手数料:1万円
- 勝った力士の獲得分:6万円
ここで注意したいのは、報道で使われる「懸賞金の手取り6万円」という表現です。
これは協会の手数料を引いた後の力士への配分額を意味します。所得税や住民税まで差し引いた最終的な手取り額ではありません。
実際の金額を例にすると、次のようになります。
懸賞10本を獲得した場合60万円

勝った力士への配分合計
現金10万円
預り金50万円
スポンサー負担総額
70万円
協会手数料
10万円
力士の獲得分
60万円
2025年5月以降の配分方式による計算。税金の最終精算前。
つまり、懸賞旗が10本回れば、勝った力士には合計60万円の獲得分が生じます。ただし、土俵上でそのまま60万円を受け取るわけではありません。
【2025年5月場所から変更】懸賞金の現金は3万円から1万円に
2025年5月9日、日本相撲協会は懸賞金の現金支給方法を変更すると発表しました。
新制度が始まったのは、同年5月11日初日の夏場所からです。
最大の変更点は、力士が勝ち名乗りを受けた際に受け取る懸賞袋の中身でした。
従来は1本につき現金3万円でしたが、変更後は現金1万円になっています。
減額されたように見えますが、力士の獲得分6万円そのものは変わっていません。残りの5万円が別口座への振り込みとなりました。
変更前と変更後の比較| 項目 | 2025年3月場所まで | 2025年5月場所以降 |
|---|---|---|
| スポンサー負担 | 7万円 | 7万円 |
| 協会手数料 | 1万円 | 1万円 |
| 力士の獲得分 | 6万円 | 6万円 |
| 土俵上の現金 | 3万円 | 1万円 |
| 本人名義の預り金 | 3万円 | 5万円 |
この変更で、力士が受け取る合計額は変わらず、現金と口座管理の割合が変わりました。
なぜ現金を1万円に減らしたのか?変更の背景には、盗難などのセキュリティー上の問題があります。
懸賞本数が増えるにつれ、力士が一度に受け取る現金も増加していました。日刊スポーツの2025年5月9日の報道によると、当時、協会側が懸賞金のために管理していた現金は約7,000万円に達していました。
懸賞を受け取る力士自身も、多額の現金を持ち歩くリスクを抱えていたのです。
また、懸賞袋に3万円ずつ現金を入れる作業も、懸賞本数の増加に伴って負担が大きくなっていました。
一部ではキャッシュレス化も提案されましたが、実際に導入されたのは現金1万円と口座振り込み5万円を組み合わせる方式です。
2023年の公式説明と現在の金額が違う理由インターネットで懸賞金を調べると、日本相撲協会の2023年公開のクイズが検索結果に表示されることがあります。
そこには、1本7万円のうち1万円が協会の事務経費、3万円が納税充当金、残り3万円が現金支給と記載されています。
これは変更前の制度を説明したものです。
2026年現在の金額を調べる際には、2025年5月の制度変更後の情報を基準にする必要があります。
【力士の懸賞金に税金はかかる?】5万円の積立金と所得税の仕組み
懸賞金を考えるうえで、もう一つ重要なのが税金です。
懸賞金は、勝った瞬間にすべて自由に使える非課税のお金ではありません。
2026年8月に公開された税理士ドットコムの税理士取材記事では、力士がスポンサーから受け取る懸賞金は、税務上の事業所得として扱われると解説されています。
納税充当金とは何か?納税充当金とは、力士が将来の税金を支払えるように、日本相撲協会が本人名義で管理するお金です。
2025年5月以降は、懸賞1本につき5万円がこの口座に振り込まれる仕組みになっています。
この5万円は、力士に支払われた獲得分の一部を税金などに備えて管理するもので、税金をすでに納付したという意味ではありません。
報道によると、所定の手続きを踏めば引き出すことも可能で、引退後の税金や生活に必要な費用に備えて積み立てる関取も多いとされています。
懸賞金の税金はどう計算される?力士の収入には、さまざまな所得区分があります。
| 収入の種類 | 税務上の所得区分 |
|---|---|
| 力士の月給 | 給与所得 |
| 力士褒賞金 | 給与所得 |
| スポンサーからの懸賞金 | 事業所得 |
| 幕内最高優勝の表彰金 | 一時所得 |
| 協会からの退職金 | 退職所得 |
このように、同じ力士が受け取るお金でも、すべて同じ税金の計算方法になるわけではありません。
特に懸賞金は、継続的に行う力士としての活動に関連する収入であり、一時所得とは区別されます。
所得税は懸賞金から自動的に差し引かれる?ここも誤解されやすいポイントです。
税理士ドットコムの取材記事によれば、力士の懸賞金には源泉徴収がなく、確定申告によって自ら納税する必要があります。
したがって、懸賞金1本につき5万円が預り金になっているからといって、所得税の支払いが完了しているわけではありません。
最終的な税負担は、年間の懸賞金収入だけでなく、必要経費や所得控除、ほかの所得などによって決まります。
覚えておきたい3つの金額
- 1万円:土俵上で受け取る現金
- 5万円:本人名義の口座に振り込まれる預り金
- 6万円:協会手数料を除いた力士の獲得分
この3つを区別すれば、懸賞金の「手取り」をめぐる混乱はかなり解消されます。
【懸賞金は誰が出す?】スポンサー企業と懸賞旗1本の費用
大相撲の懸賞金は、日本相撲協会がすべて負担しているわけではありません。
主な提供者は、企業や団体などのスポンサーです。
スポンサーは、応援する力士や希望する取組を指定して懸賞を申し込みます。懸賞旗に企業名や商品名を掲載できるため、賞金の提供と広告宣伝を兼ねた仕組みになっています。
日本相撲協会の公式案内によると、懸賞を出した企業名などは会場で配布される取組表に掲載され、取組前には場内放送でも紹介されます。加えて、懸賞旗を呼出しが土俵上で掲げることで、会場内の観客にも企業名が伝わります。
懸賞金に関わる関係者とお金の流れスポンサーから力士までの仕組み
懸賞金の対象となるのは、原則として幕内の取組です。
十両以下の取組には、通常の幕内懸賞は設定されません。
企業は特定の力士を応援する形だけでなく、希望する取組を指定する形でも懸賞を申し込めます。
そのため、人気力士同士の対戦や、優勝争いに関係する重要な取組には、多くの懸賞が集まる傾向があります。
懸賞旗1本の制作費はいくら?懸賞金7万円とは別に必要になるのが、スポンサー側が用意する懸賞旗の制作費です。
日本相撲協会の公式案内では、懸賞旗の寸法を次のように定めています。
懸賞旗の基本仕様
横幅
70cm
縦幅
120cm
制作費の目安
約3万〜6万円
制作費は生地や色数、発注先によって変動。3万〜6万円は専門業者などの案内に基づく目安で、協会の統一料金ではありません。
懸賞旗は日本相撲協会が用意するものではなく、スポンサー側が制作して持ち込みます。
また、スポンサー名を掲載する原稿には15文字以内という制限があります。旗のデザインにも一定の制約が設けられています。
スポンサーが懸賞を出す最低費用は105万円日本相撲協会の公式案内によると、懸賞の申し込みは原則として1日1本以上、1場所15本以上です。
そのため、1場所を通して最低限の申し込みをする場合、懸賞金だけで次の費用がかかります。
\[
70,000円 \times 15本 = 1,050,000円
\]
つまり、1場所の最低出稿額は105万円です。
これに懸賞旗の制作費や、そのほかの発注関連費用が加わります。企業にとっては決して小さくない広告投資ですが、15日間にわたって会場で企業名を露出できる点が特徴です。
【2026年最新・歴代獲得額ランキング】大の里が698本で新記録
懸賞金の獲得額は、力士の人気や取組の注目度を知る一つの目安にもなります。
特に2025年から2026年にかけて、大の里の獲得額は大きく伸びました。
2026年11月5日時点で確認できる最新の秋場所千秋楽時点のランキングでは、大の里が圧倒的な数字を記録しています。
2026年9月場所の懸賞金獲得ランキング
1位・大の里4,188万円
698本 × 6万円
2位・安青錦
2,190万円
365本 × 6万円
3位・霧島
1,554万円
259本 × 6万円
出典:日刊スポーツ「大相撲懸賞金獲得10傑」秋場所千秋楽。金額は力士への配分額で、税引き後の金額ではありません。
大の里の698本という数字は、1場所で一人の力士が獲得した懸賞本数としても非常に大きな記録です。
698本に1本当たり6万円を掛けると4,188万円になります。スポンサー側の支払総額に換算すると4,886万円です。
ただし、この4,188万円は税金を精算した後の最終的な手取り額ではありません。
大の里と白鵬の記録を比較大の里が記録を伸ばす以前、1場所の懸賞金獲得額で大きな記録を持っていたのは元横綱・白鵬でした。
2015年初場所、白鵬は545本の懸賞を獲得しています。
当時の懸賞金は現在と異なり、1本当たりの力士獲得分が5万6,700円でした。そのため、545本で約3,090万1,500円となります。
2025年秋場所の大の里は519本で3,114万円を獲得し、白鵬の金額記録を更新しました。
そして2026年9月場所には698本、4,188万円まで記録を伸ばしています。
| 力士 | 場所 | 懸賞本数 | 力士獲得額 |
|---|---|---|---|
| 大の里 | 2026年9月 | 698本 | 4,188万円 |
| 大の里 | 2025年9月 | 519本 | 3,114万円 |
| 白鵬 | 2015年1月 | 545本 | 約3,090万円 |
この比較で重要なのは、懸賞本数と獲得金額を分けて考えることです。
白鵬は545本で、大の里の2025年の519本を上回っていました。しかし、1本当たりの力士獲得額が時代によって違うため、金額では大の里が上回りました。
2026年9月の698本は、その両方の記録を更新する数字です。
なぜ大の里に懸賞金が集まるのか?懸賞金は、単に勝った力士に均等に配分される賞金ではありません。
企業は応援したい力士や注目される取組を指定できます。そのため、人気、番付、対戦カード、優勝争いなどが懸賞本数に影響します。
大の里の場合、横綱としての注目度や取組への関心がスポンサーの出稿につながり、結果として大きな獲得額につながっています。
ただし、懸賞金の多さは必ずしも実力だけを示すものではありません。スポンサーの広告戦略やファンからの注目度も反映された数字です。
【相撲の懸賞金はいくら?】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:相撲の懸賞金は1本いくらですか?
A1:2026年現在、懸賞金は1本7万円(税込)です。このうち1万円は日本相撲協会の手数料で、残り6万円が勝った力士の獲得分になります。
Q2:懸賞金の現金は1本につき3万円ではないのですか?
A2:2025年5月場所から変更され、現在は1本につき現金1万円です。残り5万円は力士本人名義の口座に振り込まれます。力士の獲得分6万円自体は変わっていません。
Q3:懸賞金に税金はかかりますか?
A3:かかります。力士の懸賞金は税務上、事業所得として扱われ、確定申告による納税が必要です。5万円の預り金は納税資金などに備えるためのもので、税金の支払いが完了したことを意味しません。
Q4:懸賞金を出しているのは誰ですか?
A4:主に企業や団体などのスポンサーです。スポンサーは希望する力士や取組を指定して懸賞を申し込み、取組表や場内放送、懸賞旗を通じて広告を行います。
Q5:2026年に最も多く懸賞金を獲得した力士は誰ですか?
A5:2026年9月場所の千秋楽時点では大の里です。698本を獲得し、力士への配分額は4,188万円でした。日刊スポーツの秋場所千秋楽時点のランキングでも1位となっています。
2026年現在の大相撲の懸賞金制度を理解するには、3つの金額を押さえることが重要です。
- 7万円:スポンサー企業や団体が支払う懸賞金。
- 6万円:協会手数料を差し引いた勝ち力士の獲得分。
- 1万円:2025年5月場所から土俵上で渡される現金。
そして、残りの5万円は本人名義の口座に預けられ、税金や将来の費用に備える仕組みになっています。
2025年5月の変更は、力士の獲得額を減らすためのものではなく、多額の現金を持ち歩くリスクを抑え、管理方法を見直すためのものでした。
また、2026年9月場所には大の里が698本、4,188万円を獲得。懸賞金が単なる勝者への賞金にとどまらず、スポンサー企業の広告活動や大相撲の人気を映す指標にもなっていることが分かります。
懸賞旗が土俵を回る場面を観戦するときは、旗の数に7万円を掛けた金額がスポンサーの負担額、6万円を掛けた金額が勝ち力士の獲得分です。
懸賞金の数字を正しく理解すれば、大相撲の勝負だけでなく、その裏側にある企業の応援や力士の収入構造まで、より深く楽しめます。
主な参考資料:日本相撲協会公式「懸賞について」、日刊スポーツ「懸賞金」および2025年5月の制度変更報道、税理士ドットコム(2026年8月28日公開・税理士取材)、大相撲のはてなに効く!観戦ガイド。