心エコーの当て方を理解するには、プローブを置く位置だけでなく、探触子マーカーの方向、患者の体位、呼吸の調整、超音波ビームの傾け方まで把握する必要があります。傍胸骨長軸断面・短軸断面、心尖部四腔断面・二腔断面・三腔断面など、基本断面ごとに適切な位置と向きが異なるためです。
2026年現在も、経胸壁心エコー検査では標準的な基本断面を正確に描出し、複数の方向から心臓を評価することが検査の基本です。この記事では、日本心エコー図学会の資料や米国心エコー図学会(ASE)の実施ガイドライン、2025年に発表された専門誌の解説を踏まえ、プローブの当て方から描出不良への対応、観察時の注意点まで整理します。
【基本を理解】心エコーの当て方はプローブ位置とマーカー方向で決まる

心エコー(心臓超音波検査)は、超音波を利用して心臓の形態や動きをリアルタイムで観察する検査です。
胸部には肋骨、胸骨、肺が存在するため、腹部超音波のように自由な位置から心臓を観察できるわけではありません。超音波が通りやすい肋間や軟部組織を利用し、適切な音響窓から観察する必要があります。
成人の経胸壁心エコーで基本となるアプローチは次の4種類です。
1. 傍胸骨アプローチ: 胸骨の左側から心臓を観察する。
2. 心尖部アプローチ: 左室心尖部付近から心臓を観察する。
3. 心窩部アプローチ: 剣状突起の下から肝臓などを介して観察する。
4. 胸骨上窩アプローチ: 胸骨上端のくぼみから大動脈弓などを観察する。
加えて、通常のアプローチで十分な画像が得られない場合や、大動脈など特定の構造を詳しく調べる場合には、傍胸骨右縁アプローチも活用します。
探触子マーカーの方向を理解する心エコーで初心者が迷いやすいのが、プローブについているマーカーの向きです。
マーカーは、超音波画像の左右方向と身体の解剖学的位置を対応させるための目印です。装置側の画面にも対応するインデックスが表示されます。
一般的な成人心エコーの標準的な方向は次のとおりです。
- 傍胸骨長軸断面:患者の右肩方向
- 傍胸骨短軸断面:患者の左肩方向
- 心尖部四腔断面:4〜5時方向
- 心窩部四腔断面:患者の左側方向
ただし、時計の位置は検者の視点や装置の表示設定によって認識が異なる場合があります。最終的にはマーカーの方向だけで判断せず、画面に表示された心臓の解剖学的構造が正しいかを確認してください。
ASEの成人経胸壁心エコー実施ガイドラインでも、各断面の取得時にインデックスマーカーの方向を明確にすることが示されています。同ガイドラインは日本心エコー図学会の国際的な連携資料にも含まれています。
プローブ操作の基本は3つプローブを動かす操作には、主に次の3種類があります。
スライド(Sliding)
プローブの接触面を保ちながら、皮膚上を平行移動させる操作です。肋間や観察位置を変更するときに使用します。
ティルティング(Tilting)
プローブの位置を大きく変えずに、超音波ビームの方向を傾ける操作です。心臓の別の構造や断面を表示するときに使います。
ローテーション(Rotating)
プローブを接触させた状態で回転させ、マーカーの方向を変更する操作です。長軸断面から短軸断面へ変更するときなどに使います。
このほか、同じ位置でプローブを軽く揺らすロッキング(Rocking)や、ビームの方向を細かく調整するアングリング(Angling)も重要です。
2025年の専門誌『Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery』に掲載された解説でも、スライド・ティルト・ローテーションを意識した繊細な操作が、正確な基本断面の描出につながると説明されています。
【傍胸骨アプローチ】長軸断面と短軸断面の正しい当て方
傍胸骨アプローチは、心エコーの基本を身につけるうえで欠かせない方法です。
左室、右室、大動脈、僧帽弁、左房などを観察でき、心臓の形態や壁運動を把握するために幅広く利用されます。
1.傍胸骨長軸断面(PLAX)の当て方<画像:傍胸骨長軸断面のプローブ位置とマーカー方向の解剖図>
プローブ位置
胸骨左縁の第3または第4肋間を基本位置とします。
プローブの向き
超音波ビームが心臓の長軸方向に入るように配置します。一般的にはプローブのマーカーを患者の右肩方向へ向けます。
患者の体位
通常は左側臥位とします。左腕を頭側に上げると肋間が広がり、描出しやすくなる場合があります。
描出のポイント
傍胸骨長軸断面では、主に次の構造を確認します。
- 右室流出路
- 心室中隔
- 左室
- 左室後壁
- 僧帽弁
- 大動脈弁
- 大動脈基部
- 左房
良好な断面では、左室内腔が十分な大きさで表示され、心室中隔と大動脈前壁がほぼ同じ高さになります。
また、左室後壁から左房後壁までの位置関係も確認します。
うまく描出できない場合
最初の位置に固執せず、上下の肋間へ少しずつ移動させます。特に第3肋間と第4肋間では画像が大きく変わることがあります。
正しい長軸断面では心尖部が通常表示されないことも、断面の適切さを判断する参考になります。
2.傍胸骨短軸断面(PSAX)の当て方<画像:傍胸骨短軸断面の大動脈弁・僧帽弁・乳頭筋レベルの模式図>
傍胸骨短軸断面は、長軸断面と基本的に同じ位置から取得できます。
プローブ位置
胸骨左縁の第3・第4肋間付近を基本とします。
マーカーの方向
傍胸骨長軸断面からプローブを回転させ、マーカーを患者の左肩方向へ向けます。
描出のポイント
短軸断面では、心臓を横方向に輪切りにしたような画像が得られます。
観察する主なレベルは次の4つです。
- 大血管レベル:大動脈弁、肺動脈弁、右房、右室流出路など
- 僧帽弁レベル:僧帽弁前尖・後尖と左室
- 乳頭筋レベル:左室の乳頭筋と心室壁
- 心尖部レベル:左室心尖部の形態
大血管レベルでは大動脈弁の3つの弁尖がバランスよく表示されているか確認します。
僧帽弁レベルでは弁尖の動きが明瞭に見えることがポイントです。
乳頭筋レベルでは、左室ができるだけ円形に描出され、前乳頭筋と後乳頭筋が確認できる状態を目指します。
傍胸骨長軸・短軸断面の比較| 比較項目 | 傍胸骨長軸断面 | 傍胸骨短軸断面 |
|---|---|---|
| プローブ位置 | 胸骨左縁第3・第4肋間 | 基本的に長軸と同じ |
| マーカー方向 | 患者の右肩 | 患者の左肩 |
| 画像の特徴 | 心臓を長軸方向に表示 | 心臓を横断方向に表示 |
| 主な観察対象 | 左室、左房、僧帽弁、大動脈弁 | 大動脈弁、僧帽弁、乳頭筋、左室壁 |
| 操作のポイント | 左室長軸を最大限に描出 | レベルごとにビームを傾ける |
【心尖部アプローチ】四腔・二腔・三腔断面の描出ポイント
心尖部アプローチは、左室の容積や壁運動、左右の心房・心室、房室弁などを観察するための重要な方法です。
左室駆出率(LVEF)の評価にも関係するため、心尖部を短縮させずに描出する技術が大切です。
1.心尖部四腔断面(A4C)<画像:心尖部四腔断面とプローブ位置の模式図>
プローブ位置
左胸部の心尖拍動を触れる付近にプローブを置きます。
一般的には第5肋間付近が開始位置の目安ですが、心尖部の位置には個人差があります。体格や心臓の大きさによっても変化するため、位置を固定して考えないことが大切です。
マーカーの方向
一般的なASEの標準方向では、4〜5時方向に向けます。
患者の体位
左側臥位が基本です。
描出のポイント
四腔断面では、次の4つの心腔を確認します。
- 右房
- 右室
- 左房
- 左室
加えて、僧帽弁と三尖弁、心房中隔、心室中隔も確認します。
良好な心尖部四腔断面では、左室と左房が十分な長さで表示され、両方の房室弁が明瞭に見えます。
特に重要なのが、左室心尖部がプローブの直下に位置するように調整することです。
心尖部が短縮して表示されると、左室の容積や収縮機能の評価に誤差が生じる可能性があります。
2.心尖部二腔断面(A2C)<画像:心尖部二腔断面の解剖模式図>
心尖部四腔断面からプローブを反時計方向へ回転させ、一般的には約60〜90度を目安に二腔断面を取得します。
観察する構造
- 左房
- 左室
- 僧帽弁
- 左室前壁
- 左室下壁
四腔断面で見える右房・右室が表示されなくなり、左房と左室を中心とした画像になります。
描出のポイント
左室の長軸を十分に表示し、心尖部が短縮していないか確認します。
心内膜の輪郭が明瞭に見えることも重要です。
左室容積の評価では、心尖部四腔断面と二腔断面の両方を用いる方法が標準的に利用されています。
3.心尖部三腔断面(A3C)<画像:心尖部三腔断面と左室流出路の模式図>
心尖部三腔断面は、心尖部長軸断面とも呼ばれます。
四腔断面からプローブをさらに回転させ、一般的には約120度を目安に描出します。
観察する構造
- 左房
- 左室
- 僧帽弁
- 大動脈弁
- 左室流出路
- 大動脈基部
四腔断面や二腔断面と異なり、大動脈弁と左室流出路を同時に観察できることが特徴です。
弁の形態や血流の評価にも役立ちます。
心尖部断面で失敗しやすいポイント初心者が陥りやすいのは、プローブの位置を固定したまま回転だけで目的の断面を得ようとすることです。
実際には、患者ごとに心臓の位置や胸郭の形状が異なります。
回転だけではなく、スライドやティルトを組み合わせて微調整する必要があります。
また、四腔断面と二腔断面で左室の長軸長が大きく異なる場合には、真の心尖部断面が得られていない可能性があります。
2025年の日本小児循環器学会雑誌の解説でも、心尖部四腔断面と二腔断面を適切に取得することが、左室容積や駆出率の評価に関係すると説明されています。
【心窩部・胸骨上窩・右縁】追加アプローチの当て方
標準的な傍胸骨・心尖部アプローチだけでは、すべての心臓構造を十分に観察できるとは限りません。
そのため、心窩部や胸骨上窩などからも観察します。
1.心窩部アプローチ<画像:心窩部四腔断面とプローブ位置の模式図>
プローブ位置
剣状突起の直下付近にプローブを置きます。
患者の体位
仰臥位が基本です。
マーカー方向
心窩部四腔断面では、患者の左側方向を目安にします。
描出のポイント
腹部から肝臓を介して心臓を観察します。
主な観察対象は次のとおりです。
- 右房
- 右室
- 左房
- 左室
- 心房中隔
- 心室中隔
- 下大静脈
心窩部四腔断面では、心房中隔を観察しやすいことが利点です。
また、下大静脈の長軸断面を取得することで、右房への流入部や呼吸による径の変化も確認できます。
腹筋の緊張によって画像が得にくい場合は、患者の膝を軽く曲げてもらうなど、腹部の緊張を和らげる工夫が役立ちます。
2.胸骨上窩アプローチ<画像:胸骨上窩から大動脈弓を観察する模式図>
プローブ位置
胸骨柄の上にあるくぼみ、胸骨上窩に置きます。
患者の体位
仰臥位を基本とし、必要に応じて首の下にタオルなどを入れて頸部を軽く後屈させます。
マーカー方向
一般的な大動脈弓長軸断面では患者の左肩方向が目安です。
描出のポイント
胸骨上窩から大動脈弓を観察します。
主な観察対象は次のとおりです。
- 上行大動脈から大動脈弓への連続性
- 大動脈弓
- 下行大動脈
- 大動脈分枝
大動脈弓の形態や血流を評価する際に役立つアプローチです。
3.傍胸骨右縁アプローチ<画像:傍胸骨右縁アプローチのプローブ位置>
通常の傍胸骨左縁からの描出が難しい場合や、大動脈などの特定部位を観察する際に利用します。
胸骨右縁からアプローチし、必要に応じて右側臥位を取り入れます。
特に大動脈の血流評価では、通常の断面とは異なる方向から超音波を入射できる利点があります。
また、心房中隔や右冠動脈などの観察にも有用な場合があります。
【心エコーの描出不良】見えにくいときに試したい体位・呼吸・設定の工夫
心エコーで画像がうまく映らない原因は、プローブの位置だけではありません。
肺の重なり、胸郭の形状、皮下脂肪、呼吸運動、心臓の位置など、複数の要因が関係します。
2025年1月発行の医学書院『臨床検査』に掲載された「心エコー図検査のコツ教えます」でも、体位と呼吸の調整、ゆっくりとした探触子操作が画像描出の要点として挙げられています。
1.左側臥位を調整する傍胸骨や心尖部の描出では、左側臥位が基本です。
左側臥位にすることで、肺が左側へ移動し、心臓が胸壁に近づくため、音響窓が得られやすくなります。
試したい工夫は次のとおりです。
- 左腕を頭側へ上げる。
- 背中にクッションを置いて体位を安定させる。
- 必要に応じて左側臥位の角度を深くする。
- 肺の重なりが少ない位置を探す。
ただし、呼吸困難や疼痛がある患者に無理な体位を取らせてはいけません。
2.呼吸を調整する呼吸によって肺の位置が変わると、超音波の通り道も変化します。
そのため、呼吸のタイミングを調整することが有効です。
傍胸骨アプローチ
一般的には呼気時に肺が小さくなることで、心臓の音響窓が得られやすくなる場合があります。
心尖部アプローチ
患者によっては吸気時のほうが良好な画像を得られる場合があります。
重要なのは、すべての断面で同じ呼吸方法を使用しないことです。
呼気と吸気の両方を試し、最も良好な画像が得られるタイミングを探します。
息止めを依頼する場合も、短時間で無理のない範囲にとどめ、必ず解除の合図を伝えます。
3.プローブの位置を少しずつ変更する描出不良のときに、強く押し付けることは適切な解決方法ではありません。
まずは次の順番で調整します。
1. 肋間を1つ上下に変更する。
2. プローブを少し外側または内側へ移動する。
3. ビームの角度を微調整する。
4. 必要に応じてマーカーの向きを変更する。
5. 体位と呼吸を再調整する。
一度に大きく動かすのではなく、小さな動きを組み合わせることがポイントです。
4.装置の設定を見直すプローブ位置を調整しても画像が不鮮明な場合は、装置の設定も確認します。
| 設定項目 | 調整の目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| ゲイン | 画像全体の明るさを調整 | 上げすぎるとノイズが増える |
| TGC | 深さごとの明るさを調整 | 深部の信号低下を補正する |
| 周波数 | 解像度と深達度を調整 | 深部では低めの周波数が有利な場合がある |
| フォーカス | 関心領域の鮮明度を高める | 観察する深さに合わせる |
| ダイナミックレンジ | 画像のコントラストを調整 | 心内膜の輪郭が見えるように調整する |
| ハーモニック | ノイズ低減や輪郭描出を補助 | 症例に応じて使用する |
例えば、肥満や肺疾患などで超音波が減衰しやすい場合には、周波数を下げることで深部の画像が改善する場合があります。
また、ゲインを上げすぎると心内腔にノイズが増え、かえって心内膜の輪郭が分かりにくくなることがあります。
5.描出不良が起きたときの原因と対処法| 描出不良の原因 | 起こりやすい問題 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| 肺の重なり | 心臓の一部が見えない | 左側臥位や呼吸調整 |
| 肋骨の影 | 画像に欠損が生じる | 肋間を変更する |
| 皮下脂肪・肥満 | 深部の信号が弱い | 周波数やゲインを調整 |
| プローブの不安定 | 画像が揺れる | 手を胸壁に軽く固定 |
| 断面のずれ | 心腔が短縮して見える | スライド・ティルトを調整 |
| 腹部の緊張 | 心窩部の描出が難しい | 膝を軽く曲げるなど体位を調整 |
描出不良を解決する際は、プローブ操作、体位、呼吸、装置設定を別々に考えるのではなく、組み合わせて改善が必要です。
【実践手順と注意点】心エコーの基本断面を効率よく取得する方法
心エコー検査では、断面を1つだけ取得して終わるのではなく、複数の標準断面を組み合わせて評価します。
基本的な検査の進め方成人の経胸壁心エコーを学習する際には、次のような流れで基本断面を習得すると整理しやすくなります。
STEP 1:患者の体位を整える
検査目的と患者の状態を確認し、左側臥位を基本として姿勢を調整します。
STEP 2:傍胸骨長軸断面を取得する
胸骨左縁第3・第4肋間から開始し、マーカーを右肩方向へ向けます。
左室、左房、僧帽弁、大動脈弁などの位置関係を確認します。
STEP 3:傍胸骨短軸断面を取得する
プローブを回転させ、マーカーを左肩方向へ向けます。
大血管、僧帽弁、乳頭筋、心尖部の各レベルを観察します。
STEP 4:心尖部断面を取得する
心尖部から四腔断面、二腔断面、三腔断面を取得します。
左室の長軸が短縮していないか、心内膜が明瞭に見えるかを確認します。
STEP 5:心窩部・胸骨上窩断面を取得する
下大静脈、心房中隔、大動脈弓など、目的に応じた構造を観察します。
STEP 6:必要な追加断面とドプラ評価を行う
カラードプラ法やパルスドプラ法、連続波ドプラ法などを必要に応じて組み合わせます。
なお、これは学習用に整理した基本的な流れです。実際の包括的検査では、臨床上の目的や患者の状態に応じて撮像順序や追加断面を調整します。
観察時に注意したい3つのポイント1.画像が見えていることと、正しい断面であることは別
心臓らしい画像が表示されていても、正しい断面とは限りません。
例えば心尖部が短縮していると、左室の形態や容積を正確に評価できない可能性があります。
必ず解剖学的な位置関係を確認してください。
2.一つの断面だけで心機能を判断しない
心臓は立体的な構造を持っています。
傍胸骨長軸断面だけでは評価しにくい部分もあり、短軸断面や心尖部断面を組み合わせる必要があります。
3.描出不良を正常所見と混同しない
心内膜や弁の一部が見えない場合、それだけで異常がないとは判断できません。
画像の品質を評価し、必要に応じて別の音響窓や追加の検査方法を検討します。
日本心エコー図学会の2023年の精度管理資料でも、検査の品質管理や計測の再現性、継続的な技術の見直しが重視されています。
心エコーは、プローブの位置を覚えるだけでなく、画像の品質と解剖学的な整合性を確認することが欠かせない検査です。
【心エコーの当て方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:心エコーのプローブは最初にどこへ当てればよいですか?
A1:成人の経胸壁心エコーでは、胸骨左縁第3・第4肋間から取得する傍胸骨長軸断面が基本的な開始位置の一つです。患者を左側臥位にし、マーカーを右肩方向へ向けます。ただし、検査目的や患者の状態によって開始位置は変わります。
Q2:心エコーのプローブマーカーはどちらに向けますか?
A2:一般的な標準方向では、傍胸骨長軸断面は右肩方向、傍胸骨短軸断面は左肩方向、心尖部四腔断面は4〜5時方向です。心窩部四腔断面では患者の左側方向が目安になります。装置の表示設定も確認してください。
Q3:心エコーで画像がうまく映らないときはどうすればよいですか?
A3:まず患者の体位と呼吸を調整し、プローブを上下左右の肋間へ少しずつ移動させます。その後、ティルトやローテーションでビームの方向を調整します。必要に応じてゲイン、TGC、周波数なども見直します。
Q4:心尖部四腔断面と二腔断面はどうやって切り替えますか?
A4:一般的には四腔断面からプローブを反時計方向へ約60〜90度回転させて二腔断面を取得します。実際の回転角度は患者の解剖やプローブの位置によって調整します。
Q5:心エコーでは必ず左側臥位にする必要がありますか?
A5:必ずしもそうではありません。傍胸骨や心尖部では左側臥位が基本ですが、心窩部や胸骨上窩では仰臥位が基本です。呼吸状態や身体の状態によっては、半座位など別の体位を選択する場合もあります。
心エコーの当て方を習得するには、プローブ位置、マーカー方向、患者の体位、呼吸調整を一体として理解することが大切です。
特に覚えておきたい基本は次のとおりです。
- 傍胸骨長軸断面: 胸骨左縁第3・第4肋間、マーカーは右肩方向。
- 傍胸骨短軸断面: 傍胸骨長軸と同じ基本位置から回転し、マーカーは左肩方向。
- 心尖部四腔断面: 心尖拍動付近、マーカーは4〜5時方向。
- 心尖部二腔・三腔断面: 四腔断面からプローブを回転させて取得。
- 心窩部アプローチ: 剣状突起の下から心臓や下大静脈を観察。
- 胸骨上窩アプローチ: 胸骨上窩から大動脈弓を観察。
そして、描出不良が起きたときには、強く押し当てるのではなく、体位、呼吸、肋間、プローブの角度、装置設定を順番に見直します。
【プロの結論】
心エコーの技術を高めるうえで最も重要なのは、マーカーの方向やプローブの角度を暗記することだけではありません。画面に映る心臓の構造を理解し、正しい解剖学的断面を再現できるようになることです。
基本となる傍胸骨長軸断面、傍胸骨短軸断面、心尖部四腔断面を安定して取得できるようになったら、二腔断面・三腔断面や追加アプローチへと習得範囲を広げていきましょう。
なお、この記事は医療従事者・学習者向けの技術解説です。実際の検査や診断は、適切な教育・指導のもとで行い、患者の状態と施設の検査手順に従ってください。
主な参考資料
- 日本心エコー図学会による「成人における包括的経胸壁心エコー図検査の実施ガイドライン」日本語訳。
- 日本心エコー図学会「心エコー図の診断・計測精度管理の手引き」(2023年)。
- 倉岡彩子「小児および先天性心疾患における心エコーの基本と一般的な計測」『Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery』(2025年2月28日)。
- 渡邊伸吾「心エコー図検査のコツ教えます」『臨床検査』(2025年1月15日)。