2026年3月14日には、普通運賃の特定区間変更とは別に、東京メトロと都営地下鉄が共同で販売する企画乗車券の発売額も変更された。
対象となったのは、東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券、Tokyo Subway Ticket、東京フリーきっぷなどだ。
東京メトロと東京都交通局が2026年1月30日に公表した公式資料によると、変更の目的は利用者ニーズへの対応と、地下鉄利用の利便性・乗車サービスの向上としている。
東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券の変更2026年3月13日まで → 2026年3月14日から
- 大人:900円 → 1,100円
- 小児:450円 → 550円
大人・小児ともに200円の値上がりとなった。
この乗車券は、東京メトロ全線と都営地下鉄全線を指定した1日、始発から終電まで利用できる。東京の地下鉄を複数回乗り降りする日には便利な乗車券だ。
Tokyo Subway Ticketの料金変更訪日外国人旅行者などにも利用されているTokyo Subway Ticketは、利用時間別に次のように変更された。
| 乗車券 | 旧料金(大人) | 新料金(大人) |
|---|---|---|
| Tokyo Subway 24-hour Ticket | 800円 | 1,000円 |
| Tokyo Subway 48-hour Ticket | 1,200円 | 1,500円 |
| Tokyo Subway 72-hour Ticket | 1,500円 | 2,000円 |
小児料金もそれぞれ変更されている。
- 24時間券:400円 → 500円
- 48時間券:600円 → 750円
- 72時間券:750円 → 1,000円
24時間券なら200円、48時間券なら300円、72時間券なら500円の値上がりだ。
東京フリーきっぷも変更対象東京フリーきっぷは、大人1,600円から1,720円、小児800円から860円に変更された。
東京メトロ・都営地下鉄に加え、JR東日本の都区内区間、都営バス、東京さくらトラムなども利用できるため、地下鉄以外の交通機関を組み合わせて観光する人にも関係する。
なお、これらは通常の片道運賃や通勤定期券とは異なる企画乗車券の価格変更だ。普通運賃が一律に値上がりしたという意味ではない。
【現行運賃を比較】ICカードときっぷはどちらがお得?

2026年11月現在、東京メトロの大人普通運賃は、ICカード利用で178円〜324円、きっぷ利用で180円〜330円となっている。
運賃は乗車距離に応じて5段階に分かれる。
距離別の普通運賃一覧| 乗車距離 | ICカード | きっぷ |
|---|---|---|
| 1〜6km | 178円 | 180円 |
| 7〜11km | 209円 | 210円 |
| 12〜19km | 252円 | 260円 |
| 20〜27km | 293円 | 300円 |
| 28〜40km | 324円 | 330円 |
ICカードは1円単位、きっぷは10円単位で運賃が設定されている。
そのため、同じ区間を乗車する場合、ICカードの方が安くなる。例えば、12〜19kmの区間ではICカードが252円、きっぷが260円となり、8円の差が生じる。
この金額には大人の鉄道駅バリアフリー料金10円が含まれている。小児運賃は大人運賃を基準に計算方法が異なるため、単純に大人料金の半額を適用するわけではない。
ICカードを使うメリット日常的に東京メトロを利用する人には、PASMOなどの交通系ICカードが便利だ。
主なメリットは次のとおり。
- きっぷを購入する手間がない。
- 1円単位のIC運賃が適用される。
- 改札をスムーズに通過できる。
- 乗車履歴や残高を確認しやすい。
ただし、定期券や企画乗車券などは普通運賃とは異なる料金体系が適用される。ICカードを使えば必ずすべての乗車方法で最安になるというわけではない。
鉄道駅バリアフリー料金とは?普通運賃を確認する際に理解しておきたいのが、鉄道駅バリアフリー料金制度だ。
この制度は、国土交通省が2021年12月に創設したもので、駅のバリアフリー化を進めるため、利用者から広く料金を集めて設備整備に充てる仕組みである。
対象となる設備には、次のようなものがある。
- ホームドアの設置
- エレベーターの整備
- バリアフリー設備の改良・更新
- 設備の維持管理
東京メトロでは2023年3月18日から料金の収受を開始した。
基本的な料金は、大人の普通運賃1乗車につき10円。大人の通勤定期券は1か月あたり370円が加算される。一方、通学定期券は対象外となっている。
ここで重要なのが、綾瀬駅〜北千住駅間の特例だ。
2026年3月14日以降、この区間の特定運賃には鉄道駅バリアフリー料金が加算されない。つまり、一般の東京メトロ運賃と同じ計算方法ではない。
綾瀬駅・北千住駅のバリアフリー整備計画は維持されており、料金の取り扱いと設備整備の計画は別の問題として整理されている。
【なぜ値上げする?】東京メトロ運賃改定の理由と過去の経緯
2029年3月の運賃改定方針を理解するには、東京メトロを取り巻く鉄道事業の経営環境を見る必要がある。
今回の値上げ方針の背景にあるのは、物価上昇、人件費の増加、設備の維持更新に必要な投資負担だ。
理由1:人件費と資材価格の上昇鉄道事業では、駅係員や乗務員、車両・線路の保守に携わる人材が欠かせない。
一方、労務費や資材価格の上昇は、日常的な鉄道運営だけでなく、設備の修繕や更新にも影響する。
東京メトロが2026年4月28日に発表した2026年度の鉄道事業設備投資計画では、総額993億円(新線建設を除くと823億円)の投資を予定している。
その目的として掲げているのは、安全性とサービス品質の向上、新線建設、自動運転などの新技術の開発・推進だ。
会社側も労務費・資材価格の上昇や労働人口の減少といった経営環境の変化を挙げている。
理由2:安全対策と設備更新を継続する必要性鉄道は毎日の通勤・通学を支える公共性の高い交通インフラだ。
設備の老朽化や保守の遅れは、事故や輸送障害につながる可能性があるため、日常的な点検だけでなく、中長期的な更新投資が求められる。
特に重要なのが、ホームドアやエレベーターなどの安全・バリアフリー設備だ。
これらは設置して終わりではなく、継続的な点検や維持管理、更新が必要になる。
2029年の運賃改定方針について、東京メトロは利用者の安全性や利便性向上に資する設備投資を進める考えを示している。
理由3:1995年以来となる本格的な運賃見直し今回の方針が大きく報じられた理由の一つは、全面的な運賃改定が久しぶりとなる点だ。
読売新聞やTBS NEWS DIGの報道によれば、消費税率の変更やバリアフリー料金の導入などを除いた本格的な値上げは、営団地下鉄時代の1995年以来となる。
東京メトロは2004年に民営化されたため、今回の改定が実現すれば、民営化後初めての本格的な運賃値上げという位置付けになる。
消費税に伴う価格調整や特定区間の運賃変更、バリアフリー料金の加算は、全線を対象とする基本的な運賃改定とは区別しなければならない。
2029年に向けて注目したいQR乗車券の導入2026年10月30日には、運賃改定方針と同じ日に、東京メトロからQR乗車券の導入についても発表があった。
公式発表によると、2028年度中にQRコードを利用した紙のきっぷを順次発売する予定だ。
加えて、2029年度末を目途に、現在の磁気乗車券の発売を終了する方針も示された。
磁気乗車券には、券詰まりなどによる駅務機器のトラブルや、リサイクル時の環境負荷といった課題があるという。
QR乗車券は、利用者の乗車方法を大きく変えずに、こうした問題を改善するための取り組みとして位置付けられている。
ただし、QR乗車券への移行と2029年3月の運賃改定は別の施策だ。QRコードを使うようになったから運賃が上がる、という直接的な関係が発表されたわけではない。
【プロの結論】2029年の値上げで利用者が確認すべきポイント
東京メトロの運賃改定をめぐっては、2026年3月の変更と2029年の全線改定方針を一つのニュースとして扱わないことが大切だ。
利用者が今後の家計負担を考えるうえで、特に注目したいのは次の3点である。
1. 普通運賃と定期券の改定率は同じとは限らない
普通運賃が値上がりしても、通勤定期券や通学定期券が同じ割合で値上がりするとは限らない。2029年の改定内容が発表された際には、乗車頻度や利用区間に応じて比較する必要がある。
2. 企画乗車券は通常運賃とは別に比較する
観光や休日の外出で東京メトロを頻繁に利用する人は、通常のIC運賃だけでなく、共通1日乗車券やTokyo Subway Ticketの価格も確認したい。
特に都営地下鉄やJR線を組み合わせる場合は、利用可能区間を含めて総額を比較することが重要だ。
3. 2029年の新運賃は正式発表を待つ
値上げ幅が発表されていない段階で、現在の運賃に一定割合を掛けて将来の料金を断定することはできない。
今後確認したいのは、東京メトロの正式な運賃改定資料、国土交通省への手続き、改定対象となる乗車券の種類、実際の適用開始日だ。
【東京メトロ運賃改定に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:東京メトロの全線値上げはいつからですか?
A1:2026年10月30日に、2029年3月の運賃改定を目指す方針が明らかになった。具体的な新運賃や値上げ幅は、2026年11月5日時点で公表されていない。
Q2:2026年3月14日に東京メトロ全線の運賃が値上げされたのですか?
A2:違う。2026年3月14日に変更されたのは、千代田線の綾瀬駅〜北千住駅間の特定運賃と、共通1日乗車券、Tokyo Subway Ticket、東京フリーきっぷなどの企画乗車券だ。
Q3:東京メトロの初乗り運賃はいくらですか?
A3:2026年11月現在、一般的な1〜6kmの区間では、大人IC運賃が178円、きっぷが180円。いずれも大人の鉄道駅バリアフリー料金10円を含む。
Q4:綾瀬駅〜北千住駅間の運賃はいくらですか?
A4:2026年3月14日以降、相互発着の場合は大人IC運賃155円、きっぷ160円。小児はIC77円、きっぷ80円となっている。この区間では鉄道駅バリアフリー料金は加算されない。
Q5:2029年の値上げで通勤定期券や通学定期券も高くなりますか?
A5:2029年の全線改定に伴う定期券の新料金は、まだ公表されていない。通勤・通学定期券それぞれの改定内容については、今後の公式発表を確認する必要がある。
Q6:東京メトロ・都営地下鉄共通1日乗車券はいくらですか?
A6:2026年3月14日以降、大人1,100円、小児550円。東京メトロ線と都営地下鉄線の全線を指定した1日に利用できる。
2026年11月現在、東京メトロの運賃をめぐる動きは、2026年3月14日に実施された特定運賃・企画乗車券の変更と、2029年3月を目指す全線の運賃改定方針の2つに整理できる。
2026年の変更では、綾瀬駅〜北千住駅間の普通運賃がIC155円・きっぷ160円となり、通勤・通学定期券も変更された。共通1日乗車券は大人1,100円、Tokyo Subway Ticketは24時間券1,000円、48時間券1,500円、72時間券2,000円となっている。
一方、2029年3月の運賃改定は、安全性・利便性を高める設備投資や、人件費・資材価格の上昇などを背景に実施を目指す方針が示された段階だ。具体的な値上げ幅や区間別の新料金は今後の発表を待つ必要がある。
今後の最大の注目点は、2029年の改定で普通運賃・通勤定期券・通学定期券がそれぞれどのように変わるかだ。 毎日利用する通勤・通学客にとっては、数円の普通運賃変更だけでなく、1か月・3か月・6か月の定期券価格が家計に与える影響も見逃せない。
東京メトロの公式発表と運賃表を定期的に確認し、確定した料金と検討段階の情報を区別することが、今後の交通費を正確に把握するためのポイントとなる。
記事情報基準日:2026年11月5日